ゼロからの Aras Innovator 第3回 〜 情報を立体化するリレーションシップ 〜

前回、アイテムタイプについてご紹介しました。情報管理対象(エンティティ)を表すものであり、「製品」「パーツ」「ドキュメント」「図面」「ファイル」「顧客」「工場」「発注」「出庫指示」「変更要求」「クレーム」「プロジェクト」などなど、管理対象とするあらゆるものがアイテムタイプ候補となり得ます。 今回は、それら各アイテムタイプ同士の関連を表す「リレーションシップ」について見ていきたいと思います。


「リレーションシップ」とは

「リレーションシップ」とは2つのアイテムタイプの間(正確には2つの「アイテム」の間)を関連付けるものです。 例えば、「パーツ」と「ドキュメント」を関連付けたり、「変更要求」と「図面」を関連付けたり、「クレーム」と「ファイル」を関連付けたりなどです。 この関連付けにより、単なる「ドキュメント」「図面」「ファイル」ではなく、「パーツの設計文書」「変更要求の対象図面」「クレームの添付ファイル」といった新たな意味が付加されます。

 

リレーションシップは、画面上では以下のように「タブ」として表示されます。 (パーツとドキュメントの間のリレーションシップ)

 

画面イメージからお分かりの通り、1つのアイテムタイプに対して複数種類のリレーションシップ(=リレーションシップタイプ、画面上のタブ)を設定できますし、それぞれのリレーションシップタイプで複数のリレーションシップ(1つのタブ内の各行)を登録可能です。

なお、「パーツ」と「パーツ」の間にリレーションシップを設けて「構成部品(部品親子関係)」を表現するといったように、同一のアイテムタイプ間でリレーションシップを設けることも可能です。


「リレーションシップ」のプロパティ

通常のアイテムタイプ同様、リレーションシップにもプロパティが存在します。 例えば 下図の赤枠で囲ったプロパティ ― 順序、数量、など ― は、関連付けられている子部品のプロパティではなく、親部品と子部品の間のリレーションシップ自体のプロパティとなります。


「リレーションシップ」によるメリット

情報に新たな「意味」が付加されるという意味論的なメリットだけではなく、情報を芋づる式に辿っていくことが可能になるというメリットがあります。リレーションシップを設定するだけで、PLMパッケージが持つ正展開・逆展開機能を丸々利用することができるようになるのです。


まとめ

前回ご紹介したアイテムタイプと今回ご紹介したリレーションシップで、情報の器(うつわ)に関する話はおしまいです。 次回は、その器に入る情報に対して誰が参照したり編集したりできるの? といったアクセス権に関する話をご紹介したいと思います。

それでは、また次回。


※(補足1) リレーションシップ以外による関連の持たせ方: リレーションシップ以外による関連の持たせ方として、アイテムプロパティを利用する方法もあります。DBの外部キーのようなものをそのまま素直に作成するイメージのものです。

※(補足2) DB上でのリレーションシップデータの取り扱い: リレーションシップ(正確には「リレーションシップアイテムタイプ」。いずれご説明します)もアイテムタイプと同様、DB上では「テーブル」の形でデータを管理しています。

※(補足3) 構造化されていない情報について: アイテムタイプやリレーションシップで取り扱っているのは、あくまでデータモデルとして 「構造化」 した範囲の情報になります。一方で、経営・業務の現場では 構造化されていない情報が山ほど存在しています。これらの宝の山から情報を発見したり関係性を見出したりするためのキーワードが、 「エンタープライズサーチ」「ソーシャルネットワーク」 です。Aras Innovatorを全文検索エンジンと組み合わせた事例が既にいくつか存在しますし、Arasの開発ロードマップとして「セキュアソーシャル」にも注力しています。


(アラスジャパン 宮内一也)